マインドフルネス
サバキの極意
どこに行っても必ず出会うのが、
すぐにキレる人、
イヤミを言う人、
口うるさい人、
平気で失礼なことを言う人、
そして他人の粗探しをして突っつき、上に立とうとする人などの
「めんどくさい人たち」です。
そのため、パワハラやセクハラ、モラハラといったハラスメントも、誰にでも降りかかる可能性があります。

気づきに気づく方法で、
相手の攻撃をサバく
では、“攻撃を受け流す”方法とは何でしょうか。
囲碁や武道では、相手の攻撃を受け流す技術を「サバキ」と呼びます。
ここで、SUTが勧める「気づきに気づく」「認識を認識する」(いわゆるメタ認知)の方法を詳しく見ていきます。
先ほど紹介した「フリーフォーカス」が基本ですが、「サバキ」はその応用です。
「フリーフォーカス」では心が移り変わる先を追いかけます。
ここまでは通常のやり方と同じです。
しかし「サバキ」では、たとえば心が音に向かったとき、確認するのは「音が聞こえていること」ではなく「注意のほう」です。 つまり「気づいているという事実」を確認するのです。
これがSUTの言う「気づきに気づく」状態です。
次第に明確になってきます。
これが「認識を認識する」状態です。
「気づきに気づく」と「認識を認識する」の違いが分かったでしょうか。
これができるようになれば、もう鬼に金棒。
最強のメンタルを手に入れたも同然です。
他人に罵倒されたとき、相手の言葉をそのまま受け取るのではなく、「注意点」を通して聞いたとしたらどうでしょう。
ダメージの大きさは?
攻撃は効きますか?
そうです。
注意点を通して知るということは、対象を無力化することなのです。
どんな罵詈雑言を浴びても、ダメージは大幅に軽減され、あるいはまったく効かなくなる――そんな無敵の状態になるのです。
SUTが折に触れて勧めていたこの方法は、実は社会生活の中で必ず出会う「めんどくさい人」や様々な問題を――
サバいて! サバいて!
サバいて! サバいて!
――心を守り、ストレスを減らし、常に落ち着いて、失敗を少なく生きるための最良の方法だったのです。
非難されているときは、心の中でひたすら注意点の行き先を追いかけていれば大丈夫。
サバキの練習方法
「気づきに気づく」
「認識を認識する」
テクニックを実際の場面で使えるようになるには、普段から心がどこにあるのかを把握しておく必要があります。
とはいえ、難しいことではありません。
むしろ一般的なマインドフルな生活よりも簡単です。
通常のマインドフルネスでは、
見るもの、
聞くもの、
感じること、
考えることなど、
心身に起こるすべての現象に気づかなければなりません。
しかしこの方法では、心がどこにあるかを確認し続けるだけでよいのです。
難しいのは、何かを見たり会話したりしている最中に気づきを持続させることです。
そのためには、テレビを見ているときや家族・友人と話しているときなど、日常の場面で
確認する習慣をつけましょう。
それが癖になれば、実践の場で大いに役立ちます。
SUTによれば、このテクニックの習得には数か月から数年かかるそうです。
極意を体得するにはそれなりの修行が必要ですが、瞑想経験が長い人ほど習得は早いようです。
試しに心の行き先を5分間追い続けてみてください。
心がエネルギッシュに感じられるはずです。
もし気持ちが弱りそうになったら、この「気づきに気づく」テクニックを使えばすぐに回復できます。
非難された内容について
絶対に考えない
では、もし気づきを通さずダイレクトに攻撃を受けてしまったらどうするか。
その場合は、言われたことについて絶対に考えないでください。
考えれば考えるほど状況は悪化します。
そもそも「めんどくさい人」の言動には意味がありません。
多くの場合、相手は他人をマイナスなキャラクターに当てはめて優位に立ちたいだけです。
そんな無駄な言葉に心を消耗しても時間の浪費にしかなりません。
そういうときは、ただちに「気づきへの気づき」を再開しましょう。
それでも気になって考えてしまいそうなときは、怒りや悲しみといった感情をしっかり感じ取ってください。
考えたい衝動があれば、それも観察します。
感情や衝動が強すぎて巻き込まれそうなときは、呼吸に避難するとよいでしょう。
呼吸を観察しながら、感情や衝動が過ぎ去るのを待ってください。
その際は、前回の記事でも触れましたが、
心を身体の中に収めるようにすると、
より効果的です。
まとめ
1. 基本の土台「フリーフォーカス」
座ってリラックスする
対象を決めず、心が向かう先を観察する
音に気づいたら「気づいている」と確認する
感情や感覚も同様にただ認識する
👉 ラベリング不要。「いま気づいていること」を確認するだけ。
2. 応用編「サバキ」
音 → 音そのものではなく「気づいていること」
怒り → 怒りそのものではなく「怒りに気づいていること」
👉 相手の暴言を“注意点を通して”聞くと、ダメージが激減します。
3. 実践ステップ
嫌な言葉に直接反応しない
「いま、自分は何に気づいている?」と確認
言葉は通過させ、注意点だけを観察
これで心を守れます。
4. 日常でトレーニング
テレビを見ているとき
会話中
通勤・家事の最中
👉 「いま何に気づいている?」と自問する習慣を持つだけでOK。
5. ダイレクトに受けてしまったら
考え込まない(考えると感情が発生する)
感情をそのまま感じる
考えたい衝動も観察
つらい時は「呼吸」に戻って落ち着ける
サバキ体験談
では、ふだんから SUT の Q&Aを参考にしながら瞑想している熱心な修行者のみなさんに、この方法をやってみてどうだったか、実際の体験を語ってもらいました。
果たしてサバキは実戦で使えるのか?めんどくさい人の攻撃は受け流せるのか?
ちょっと実験台のネズミを見るような感覚で読んでみてください。
埼玉在住/Tさん(瞑想歴5年)
ヒロさんから今回のお話を聞き気づいたのは、私が日頃実践しているのは「気づきに気づく」ことだった、ということです。 それ以前の私は、そのときどきに湧き上がる「気持ち」を意識的に認識しようとしていました。
けれども、それはラベリングと同じで、どうしても反応が一歩遅れてしまう。
次第に、その方法を使う頻度は減り、自然と「今、何に気づいているか?」と確認するほうへと切り替わっていきました。
すると、不思議なことに、日常で何か出来事が起こったとき、冷静に対処できることが増えていきました。
とはいえ、私は特別な効果を期待していたわけではありません。
意識して「身につけよう」としたというよりも、気がついたらそうなっていた――そんな感覚に近いのです。
今では、何が起こっても「まあ、それでもいいのではないか」と思えるようになりました。
まるでVRの世界に身を置いているかのように、現実の出来事を少し離れた視点で眺めているような感覚です。
接客業に携わっていることもあり、実際には小さなトラブルや人との摩擦が絶え間なく起こります。
けれども、ひとつの場面を冷静に切り抜けたあとには、「よく頑張ったな」「よくやった」と、自分を意識的に褒めて認めるようにしています。
特に印象的なのは、怒りを感じているときです。
たとえば、突然トラブルに巻き込まれた瞬間――
心がざわめき、体に熱がこもるような感覚の中で、時間の流れが一気に加速していくように感じられます。
そんなときこそ、「気づきに気づく」という実践が支えになります。
荒波のように押し寄せる感情をただ「そこにある」と見ていると、不思議と飲み込まれず、かえって軽く、心身が楽になるのです。
気づきに気づくとは、嵐を止めることではなく、その只中に立ちながらも、揺らがない視点を取り戻すことなのだと、今は静かに実感しています。
福岡在住/O氏(瞑想歴5年)
以前からなのですが、ヴィパーサナー瞑想を始めてから、物事に対して深刻さが薄れてきています。 冷静に対処すれば良いだけだとわかっているので、必要以上に振り回されなくなりました。
「認識を認識する」ことの効果は、まだはっきりとは実感できていない気がしますが… それでも、以前は娘たちに対して「私の娘」として接していましたが、気づきによって「私」という感覚が少しずつ溶け出した後は、ひとりの人間として接するようになりました。
その結果、大きな苦しみがひとつ減ったように感じています。 これからも小さな気づきを重ねながら、さらに心の自由を広げていければと思います。
そんなわけで、
SUTおすすめの「気づきに気づく」方法を、
ぜひ一度お試しください。
身に降りかかるさまざまな問題を、
次から次へとサバいていくうちに、
きっと修行も進歩していくはずです。
腐ったものを畑の肥やしにするように、
性根の腐った人もまた、
修行の肥やしにしてしまいましょう。