【修行者列伝〈ミャンマーで出逢った修行者たち〉#26】コブラ使いのような修行者

2021年2月6日土曜日

修行者列伝

t f B! P L



C氏 イギリス人 30代 男性



 ンドン出身のインド系イギリス人C氏が、ミャンマー中央部のシャン高原にある、マハーシ式のM瞑想センターのカロー支部にやって来たのが2016年の5月。だがC氏は、インド系ミャンマー人の多いシャン高原では見事に外国人に見られる事はなかった。


C氏はそれまでシュエウーミン式のS瞑想センターとモゴ式のSW瞑想センターとで数か月間修行してきたが、どこも修行者が多くて落ち着かなかったため、少人数の小さな所で静かに瞑想したくなって、わざわざヤンゴンから高速バスで8時間以上かかるシャン高原まで足を伸ばしてきたのだ。


しかし「高原の静かな瞑想センター」という噂を聞いて訪れたC氏であったが、実際のところはどうだったのだろう?


そうだ、残念ながら彼の期待は無残にも裏切られてしまう。なぜならその時のMセンターの修行者の中には恐ろしいほど攻撃的な人物がいて、いつも新参者が来るたび容赦なく苛めていたからだ。





C氏が外人用宿舎に入寮した時、外人の男性修行者は3人いた。


内訳は日本人が2人と韓国人が1人。日本人のうちの1人は私だった。そして新参者が来るたび苛める人物というのが60代の韓国人男性Pだった。


Pはやたらとライバル意識が強く、修行者を見れば直ぐライバルと見なし、必ず徹底的に蹴落とそうとした。


恐らく修行者たちに自らの優位を示そうとしていたのだろう、とにかく他人のアラ探しをしては突っついてばかりいるタチの悪い性格をした、いわゆるサイコパスと呼ばれる類の人物だった。



修行するサイコパスたち 




 ついでに言えば修行にサイコパスは付き物と言うか、ミャンマーの瞑想センターにいる限りはどこへ行っても必ず出くわすのがこのサイコパスだ。


とにかくどこへ行ってもこのサイコパスに出くわさない事はない。それもそのはず、これは遺伝的な病気で、この手の人物は大体人口の4パーセントぐらいの割合で必ず存在しているのだと言う。


私がよく会うのは勿論日本人サイコだが、それ以外にも中国人、韓国人、そしてミャンマー人と、どこの国にも絶対存在している。


そしてこのサイコパスの共通点はというと、瞑想センターの場合は必ず居眠りしている奴を起こすという点だ。それも指導者でもないくせに「何を寝てるんだ!」と偉そうな態度で。しかも自分は一日何時間寝てるか判らないぐらい寝ているくせにだ。


あとはスマホもそうだ。他人がスマホをいじっていると絶対「何スマホなんかやってんだ!」と突っついてくる。自分はほぼ一日中動画を見ているにも拘わらずにだ。恐らく彼らには自分がそういう事を言えるだけの資格があるかどうかを考えるだけの能力が欠落している。


それから誰かが食事している所をどんな遠くからでも見ている。そして食べるのが早ければ「ちゃんと気づきながら喰ってるのか!」と言ってくるし、気づきながら食べていれば今度は量の事で「ガッついてるな」とか何とか言ってくる。


まあこの2つがサイコパスの二大共通点と言っていい。


あとはライバル意識が強かったり、嫉妬心が強かったりするので、ライバルと見なした奴や嫉妬した奴の事をいつも見ていて、何か失敗するのを待っている。何か失敗したらその事で突っついたりバカにしたりして自らの優位を示そうとするのだ。


とにかくいつでも他人のやる事をジロジロ見て弱点を探し、付け入る隙を狙っている。嫉妬した奴の事は徹底的に邪魔をして足を引っ張って引きずり降ろす。


これは日本人サイコだけでなく、どこの国のサイコにも共通する特徴だ。こういう奴が本当にどこの瞑想センターに行ってもいる訳だ。ちなみにマハーシ式の総本家のM瞑想センターヤンゴン総本部には「2013年日本人修行者流血の乱闘事件」という伝説も残っている。


この話は日本人の60代のサイコパス男性が、一緒に修行していた20代の日本人男性の失敗や欠点をアラ探しして突っついた挙げ句、耐えかねた20代男性の逆襲に遭い、殴り合いの乱闘にまで発展した(路上で殴り合いになり二人とも深い側溝に落ちてしまった)というケースだ。


ここまでエスカレートするケースは珍しいが、サイコパスに関するトラブルは、このように瞑想センターでは日常茶飯事になっている。


面白いのはこの事件の話を、別のサイコパスが耳にした時の事だ。なぜならそのサイコは「その60代男性はまだミャンマーのどこかにいるでしょうね。日本に帰っても居場所がないから」と、まるで自分とは全然違うタイプの人間の事を言うようなような口ぶりで嘲笑したからだ。


ハタから見ればそいつと全く同じ事をやっている、全く同じ最低の人間の話なのだが。



気づく事が出来ないサイコパス 


 こういう出来事からも判るように、やはりサイコパスには状況把握能力が欠落している。


自分を客観的に見る、あるいは自分のやっている事を顧みる事が出来ないのだ。これではマインドフルネス瞑想の修行に入る事など出来ない。


まず、サイコパスは一旦他人の過失を見つけると、あとはその人に「オマエはこういうヘマをする人間だから○○な奴だ」とレッテルを貼り付け、その人の事をさも劣った人物であるかのようなキャラクターに当てはめて他の人々に言いふらす。そしてそのような人物として扱おうとする。


サイコパスは無常も実体幻想も理解出来ないのだ。だからサイコの前で何か失敗をすると、一生涯その事を言われ続ける事になる。


さらに、サイコパスは他人を自分に都合のいい用に仕立て上げようとプレッシャーをかけてくる。自分の好みを相手に押し付け、相手がそれを受け入れれば攻撃の手を緩め、受け入れなければ一層激しく攻撃するといった形で調教しようとしてくるのだ。


サイコの容赦ない攻撃に疲れると、そこで言いなりになるしかない。サイコパスはこのようにして周囲の人間を操っている訳だ。


そしてサイコパスは物事を表面的にしか見る事が出来ない。他人の言う事を何でも額面通りに受け取り、その場の空気を察したり行間を読んだりする事など出来ない。他人を見る時もその人の性格を見る事が出来ない。人を判断する材料は専ら「顔」とか「社会的地位」とかうわべだけのものになる。


例えば瞑想センターでよく「あの長老の智慧の切れ味は鋭いな。どこまで悟っているのだろう?」などと話していても、サイコには通じない。サイコはその人智を超えた智慧というものが理解出来ないのだ。


だからアーチャン・ミツオ・カウェサコ師のような叩き上げの大聖者を見ても変な人だとしか思えない。サイコは瞑想指導者を見るにも「どこの大学を出ているから凄い」とか「超能力を使うから凄い」などと、全く表面的な部分で判断するしかない。


こういう事からもサイコパスがいかにマインドフルネス瞑想に向いていないかという事がよく判る。


だからサイコパスの方々が瞑想される時は、気づきではない方法を摸索された方がいい。


くれぐれもマインドフルネスの方へは来られませんように(W)



苛められるC氏 





 話は飛んだが、C氏がM瞑想センターのカロー支部に着いた時、我々日本人はサイコ韓国人のP氏の事を全然相手にしていなかった。


私も最初P氏に会った時はちゃんと挨拶して一緒に修行していたのだが、1時間ぐらいして直ぐサイコだと判ったので、あとは「修行に打ち込むから話かけないでくれ」と何を言われても無視するようにしていた。


瞑想センターという所は、道場である瞑想ホールが男性用と女性用とに分かれているのだが、そのうち私はサイコに会わないで済むように、尼さんに頼んで女性用ホールの隅っこで瞑想させて貰うようになった。


その時は尼さんたちも、高慢なP氏の行動に散々悩まされていたので、喜んで歓迎してくれていた。


だが新参者のC氏はまだそんな事情など知らないから、うっかりとP氏に話しかけてしまったようで、私と会った時には既にP氏に掃除の仕方の事で苛められていた。


しかもサイコパスは露骨に人種差別をするから、C氏は白人だったら良かったのだが、インド系なものだから思いっきり見下されていた。


しかも食事の時もC氏はP氏と同じテーブルにさせられて、P氏にいちいち重箱の隅をつつくような事を言われながら食べていた。だから私は食事が終わったらC氏に、直ぐにP氏から離れるように言ってやろうと思っていた。


だが、その時だった。C氏が何やらサイコのP氏に声をかけたのだ。



「ご飯のおかわりいかがですか?」



そしてP氏の皿にしゃもじでおかわりを追加してやっている。やけにP氏に従順な態度でだ。更に「お茶飲みますか?」と言っては茶碗にポットからお茶をついでやったり、色々食事の世話を焼いたりしている。


そしたらP氏もアラ探しを止め「う・・・」とC氏にされるがままになってしまったではないか。



「あっ!今度は新参者がマウントを取った」



何と!C氏はこの時一瞬でP氏から人間関係の主導権を奪ってしまった!


しかも全く威嚇したり言い負かしたりする事なく。その手法たるや鮮やかの一言!一体何者なんだ?このC氏という人は?



サイコを馴らすC氏  





「奴らはプライドを維持しようとして他人を貶めようとするんだ。だからこちらからプライドを満足させるような事をしてやればいいだけだよ。奴らを馴らすなんて朝飯前さ」


食事が終わって直ぐの事だった。私はP氏について色々とアドバイスをしてやろうと思い、まっしぐらに新参者のC氏の部屋へ向った。そして色々とサイコパスの危険性について訴えようとしたところ、逆にC氏にそのように言われてしまったのだ。そればかりではない


「なぜあなたはP氏と話さないのか?話してみればいいじゃないか。彼はあの後俺に『怒って悪かったな』と謝ってきたぞ。本当はいい奴なんだ。あれは病気だよ病気が彼をああいう風にさせているだけなんだ」


などという、恐ろしい事まで言われてしまった。サイコパスと話すって、毒蛇とかサソリとかムカデを素手で触るようなものではないか?


どうでもいいがC氏はこの手の人々についてずいぶん詳しいぞ。彼は何をやっている人なんだと思って聞いてみると






「俺はクリニカル・サイコロジスト(臨床心理士)なんだ」という答えが返ってきた。


何だ、そうだったのか。彼はロンドン市内で人々の心に問題を抱える人々の相談に乗る、プロのカウンセラーだったのだ。なるほど、それで心に障害を持つP氏の扱い方が上手かった訳だ。



「しかし私は嫌だな、サイコパスと話すなんて」



私がそう言うとC氏は「何、彼はあんたと人間関係を結びたがっているんだよ。ただ病気だからああいう態度になるだけだ」とまで言う。


何であんな攻撃的な態度がそうなのかサッパリ判らない。


だが、そう言われてみれば心当たりがない訳でもない。私はそれ以前にも他の瞑想センターでミャンマー人のサイコパスに絡まれた事があるのだが、その時もそのサイコパスはいつでも私の事をジロジロ見ていて、何か付け入る隙を見つける度、直ぐに攻撃してきた。


しかし彼は実際には日本好きで、私と友だちになりたくてそのような行動に出ていたのだ。どうして交友関係を結びたいのにそのような逆効果にしかならないような行動をとったのか?


「それはやっぱり病気だから。他人と良好な人間関係を築きたい時でも、どうしても自分の方を上に位置づけたいのだろう」


なるほど!とにかく彼らは異常なほどプライドが高くてそれを守るために周囲の人々にライバル意識をむき出しにするのか。確かに彼らは自分の事を何様かと思っているのか判らないぐらい偉そうな事ばかり言っている。


しかしこのC氏は中々サイコパスの馴らし方が上手い。猛毒を持つサイコパスをこんなに上手に操るなんて、まるでインドのコブラ使いのようだ。




サイコパス牧場の夢 




「あなたもサイコパスと話してみたらどうだ?いい修行になるぞ!」




C氏は簡単に言うが実際にはそんな甘いものではない。だが確かにいい修行にはなる。ではもしC氏のようにサイコ馴らしに熟練したらどうなる?サイコを集めて何か出来るか?


もしかしたら彼らの分厚いツラの皮は高級な革製品の素材になるかもしれない。またマムシとかハブとかサソリとか、猛毒を持つ生き物のエキスは滋養強壮剤になるから、彼らのエキスも使えるかもしれない。


「よし!ではサイコパスを繁殖させてサイコ牧場を設立し、彼らを素材にした高級革製品と強力なドリンク剤を開発しよう!そうすれば一儲け出来る!」


サイコ馴らしの修行は金儲けへの道!?などと、コブラ使いの例えからついつい変な方向へと妄想がそれてしまったが、それはいいとして、C氏の言う修行とは一体どういうものなのか?


一言で言えばそれは勿論慈悲の修行に決まっている。サイコパスの強烈な攻撃性に勝てるものは、メッターのエネルギーしかないのだ。



サイコパスに挑む 


 という事で、私はC氏に言われるがまま、韓国人サイコパスP氏を馴らす事に挑戦してみた。

私の持つメッターのエネルギーと、サイコパスP氏の攻撃性のエネルギーとでは果たしてどちらが強いのか比べてみるのだ。行き先はP氏が瞑想している男性用瞑想ホールだ。





 ミャンマーの坊さんたちはよく犬を相手にメッターの強さを試している。野良犬が寄ってくれば手かざしをしてメッターを送ってやるのだ。するとメッターが強烈な場合は犬がひっくり返ってお腹を上にして「まいった」の姿勢をとる。それを見ていると瞑想指導者たちのエネルギーの凄さが良く判る。


「よし!そんな風にいっちょうサイコに『まいった』と言わせてやろうか」


私はそのように意気込んで瞑想ホールのドアを開けた。するとそこには歩く瞑想をするサイコパスがいた。そして私の方をギロリと睨み案の定「うるさい!音をたてるな」と言ってくる。


それに対する私の反応は当然メッター(慈悲の波動)だ。


部屋の中は密閉されていて暑いので、窓を開けようとすると今度はP氏は「虫が入って来るから開けるな」とそれを制止した。私とP氏のやりとりはいつもこんな感じだ。動画にすればこういう風になるかもしれない。


この松本氏はもう亡くなられた方だし、サイコパスかどうかは判らないが、P氏と凄く良く似ている。





そしたら密閉された部屋の中で歩きながらブーと勢いよく屁をひるP氏。全くマナーも何もあったものではない。だが私が座ろうとゴソゴソやってる音の方は気になるようで「うるせえって言ってんだろ」とまた怒ってきた。


何という自己中心的な態度なのか。


だが私に出来る対応は、どんな時でも慈悲を送る姿勢を崩さない事だけだ。


だからここでやるのは勿論慈悲の瞑想だ。この時は念入りに1時間続けた。しかも半分ぐらいはP氏に送った。そしてその結果はどうなったかと言うと、何と!その時実は私は世紀の大発見をしてしまったのだ。



公開!世紀の大発見! 


 これは言うべきか黙っているべきか本当に迷ってしまう。無料で出すにはあまりにも惜しいネタだからだ。だがこれは私だけの実力によるものではない。やはり半分はC氏のお陰なのだから、もうこの際太っ腹になって言ってしまおう!


実は私はこの時、メッターを送っていれば相手が何を言ってきても気にならないという事に気がついた。サイコが攻撃している間に慈悲の瞑想をしていれば、こちらの心は傷つく事はないのだ


それだけではない。相手にアラ探しをされ、視線が気になった時でも、メッターを送ってやれば全然気にならなくなる。


つまり慈悲の瞑想をしている間はプライドも自意識もなくなっているのだ



「やった!これは凄い発見だ!」



逃げたサイコパス 


 サイコパス牧場を設立するまでには至らなかったが、P氏にメッターを送った恩恵は直ぐに返ってきた。


これは大発見だ。さすがプロのカウンセラーのC氏だ。本当にいい事を教えてくれた。彼がいなければ私はサイコパスから逃げっぱなしで、こんないい事をおぼえる事はなかった。


この必殺技さえ持っていれば、これから人間関係でウザい思いをしても直ぐに解決出来る。


もう怖い物なしだ。サイコパスが出てきてもコブラ使いのように馴らしてしまえる。本当にピストルか何かを手に入れたかのように気が大きくなった。


C氏にはお礼として日本のインスタントラーメンを2〜3袋あげた。大発見と言いながら2〜300円のお礼で済ませてしまったが、それをC氏は「旨い!!」と目を丸くして驚きながら食べてくれた。


そんな事をやっていたら、今度は突然韓国人P氏がM瞑想センターから出て行ってしまった。


理由は判らない。ミャンマー人たちも外国人たちも、そこで修行していた人々はみんなP氏を避けていたから居づらくなったのだろうか?それは定かではない。


だが私はその時はそれもメッターのパワーで追い出したように思えたのだから勘違いも甚だしい。


そうやってC氏はMセンターのカロー支部に2か月ほど滞在して帰国した。ミャンマーでは通算で丸一年修行した事になる。全ては今後のカウンセリングのためという話だったから、きっと今頃は修行の成果を仕事に活かしている事だろう。


私はその後も、行く先々で必ずサイコパスに会った。しかしそれも全てこの時おぼえた必殺技で、ピーヒャラピーヒャラとコブラ使いのようにかわしてきた。


そしてその都度絶対に思い出すのは、C氏の事と、この時サイコパス牧場を設立する妄想をした事なのであった。






画像出典 
ロンドンの鳥 :  Free-Photos
牧場 :  Brigitte is always pleased to get a coffee





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  最終更新日 2023.12.31

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